2007年7月1日日曜日

硫黄島からのメッセージ


6月30日(土)にDVDをまたまた借りました。日米合作で、太平洋戦争を描いた2本の映画です。「父親達の星条旗」&「硫黄島からの手紙」。立て続けに、2本見たので、手応えありました。まぁ、昨年の夏に、世間を騒がせていたので、見といて損はないかなぁっと思い、借りました。
初めに、父親達の星条旗を見終えて、エンディングで、クリント・イーストウッドが監督を務めた事を知りました。なんだぁ~、初めから、それを知ってたら、また、見方は変わったのにぃ~ってちょっと、後悔しました。その次に、硫黄島からの手紙を見たのですが、戦闘シーンなんかに、共通のフィルム等が使われていて、さすが、日米合作、効率良いし、日本軍とアメリカ軍の両方の視点から見れるから、なるほど、面白いっと感じました。その最後に、またまた、クリント・イーストウッドによる監督作という事を、エンディングスクロールで知って、まじめに、後悔しました。
僕の大学4年間で見たVHS映画ランキングでは、彼の「許さざる者」が、ベスト3にランクしていたし、彼の主演の映画は、ほぼ全部見ていました。「許さざる者」は、彼自身が、相当、黒澤明監督の「七人の侍」に深く共感し、内容は、「カウボーイ版.独りっきりの侍」って感じの、格好良い、奥深く、ジーンとくる映画でした。今回、2本のDVDを見たあと知ったけど、硫黄島からの手紙は、当初は、日本人監督によって、制作される予定でしたが、適任者が居ず、イーストウッドが引き受けたとの事でした。彼曰く、「黒澤が生きていたら、彼に、作って欲しかった」っとコメントを残しているようです。
2本の硫黄島決戦を両国の視点から捉えた映画を見て、思う事を下記に記します。今回は、「戦争は、いけない!最悪だ!でも、防げない!」等の戦争の是非については、コメントを避けようと思っています。理由は、このマスでは、足りないからです。なので、別の件について、書きます。
1)米軍MarineCorporation(海兵隊)の組織力に関して
アメリカ国民には、絶大な支持を得てる軍隊ですが、日本では、陸・海・空軍に比べて、認知度は落ちます。僕も同感です。しかし、MBAスクールでもこの米国海兵隊の組織力を勉強した事があります。米民は、マリンコーっと呼ぶらしいですが、当然、軍隊としての規律は厳しいのは、どの軍隊とも同じとして、彼らが、他の軍隊と大きく異なるのは、ミッションにおける兵士死亡率が、最も高く、戦争においては、彼らなくして、突破口を築けないほど、重要な任務をこなします。硫黄島の決戦でもそうですが、WW2で、ナチス軍と戦ったノルマンディー上陸作戦等、かなりな無謀なミッションです。要するに、敵が待ち構えているエリアに相当不利な状態(海)から、侵入するのです。まず、海兵隊が、進行し、それを拠点に、海軍がそこを補給地としてベースを固め、その後、空母から、戦闘機が爆撃へ出動し、制海権、制空権を獲得した後、最後に陸軍がジワジワ進行する事となります。要するに、硫黄島は、WW2における、両国にとっても、重要な位置づけになります。米軍が硫黄島を取れなければ、東京大空襲、沖縄決戦、広島・長崎はなかった事になります。その為、両国、多くの兵士が、そこで戦士しているのです。日本兵は、2万人近くが全滅し、アメリカ兵も6,000人規模が戦死し、負傷者は、2万人以上です。アメリカが、死傷者含め、敵国よりも多くの損害を被った戦いは、そう多くないはずです。
なぜ、MBAでMarineCoについて学ぶかというと、戦場の上司の命令の届かない範囲(混乱状態)においても、各兵士が任務を理解し、阿吽の呼吸で配置に着く訳です。その阿吽の呼吸ってのが、実は、日本社会では、基本とされることですが、言葉にしてナンボのアメリカ社会では、珍しい文化なのです。では、なぜ、日本が阿吽の呼吸に長けているかというと、日本人は、友人と裸の付き合いで風呂に入り、一緒に酒を飲み、まあ、一緒に女遊びもする。そうする事で、会話なくして、お互いが何を感じ、何を期待するかが理解できてくるらしいです。これをKnowledge Management(知識創造経営)という視点で、MBAで勉強します。如何に個人に宿る知識、技量を、組織の中に蓄積させるか?って事です。
実際のMarineCo出身のOB達は、退隊後も、親密なコネクションをキープし、ビジネス社会でそれを生かして、多くの人が成功しているようです。まぁ、映画の中で、そのMarinceCoの組織力ってのを、すこし、感じる事ができます。
2)日本軍の組織力に関して
主に、日本側の視点は、「硫黄島からの手紙」から自ずと見る事となりますが、2つの新しいポイントを提示しているように感じました。ひとつは、日本人にとっても、渡辺謙演じる栗林中将は、今まで、僕達が学んだ、戦時中の日本の軍隊像イメージを壊してくれるカリスマ的リーダーシップを表現しています。実際に、栗林中将がそうであったかは知りませんが、当時でも、このような視野の広い、部下思いで、しかも、責任感の強いリーダーが居たのかなぁ~っと考えるだけで、なにか、当時の大先輩に対し、誇りを持つ事ができます。
もうひとつのポイントは、現代アメリカ人に対して、ジャニーズJr.二宮君が演じる日本兵像は、また、新しい日本軍のイメージを抱かせる契機になるではないかと感じました。きっと、現代アメリカ人は、当時の日本人をYellowMonkeyと冷笑し、天皇陛下の為に、万歳しながら、特攻(自害)するイメージしかないものと思われます。その中で、二宮君演じる日本兵は、常に、国への責任(戦死して靖国で会おう!)の雰囲気の中、本土に残してきた妻と娘の事を思い、生きて帰る!っと、常に葛藤しながら、硫黄島で戦います。現代アメリカ人にとっても、そんな日本兵がいたのかなぁ~っと考えさせるには、意義ある登場人物であったかと思います。
日本軍の組織力に関しては、議論するまでもありません。もう余りにも戦力的に劣る状況の中で、(当時、アメリカは500万台/年車生産を誇る最豊国に対し、ミッドウェイ、サイパンで大敗し、本土からの硫黄島への援軍なしの孤立した日本軍の状態)、如何に戦うか?組織力の前の、気合の世界です。でも、渡辺謙演じる中将のコメントが泣けます。「戦力の差、大本営からの援軍皆無の状況を考えた時に、勝ち目は薄い。しかし、本土にいる妻、子供たちに、一日でも長く生きて貰う為に、硫黄島での一日でも長い抵抗は、意義あるものだ!」なぜ、戦争を行わなければならないのか?は、ここでは論じないが、そういった僕達の先祖が、必死に国土、子孫を守ろう!っとして戦死した事実を、僕達は、誇りに思うべきだね。本当に、泣けるほど、うれしい事なんだよ。これって。
3)赤紙(召集令状)と訃報
この2本の映画で、両国に共通して悲しい事実は、憲兵隊が召集令状を持参するタイミング。「ついに、来たかぁ~。行くしかないかぁ~」っと心に思いながらも、「お国の為、喜んで出兵します!」っと言わなくてはならない状況。アメリカ側では、「正義への使者」としての国旗に誓っていたのかも知れません。生還を待ち続ける家族は、息子だけは、旦那だけは、死なない!っと信じ続け、ある時、届く訃報。泣き崩れるしかない中、「お国の為、正義の為、彼は、立派に戦った」っと思う事で、落ち着かせるしかない心理状態。戦争は、加害国、被害国共に、家族を取り巻くHappinessを破壊してしまうんだよね。誰が、Happyになれるのか?軍事産業と大統領(総理大臣、or 独裁者)だけか?僕個人的には、それから50年、100年経った時、その子供達、その子孫達のHappinessの為に、多くの人が死んでいったっと解釈するしかないよね。アメリカと戦って戦死した日本人先祖のお陰で、今の僕達のHappinessがもたらされている事に感謝すると同時に、韓国や中国、その他、東南アジアでの逆に日本が加害国として悲しみを与えた人たちにも、僕達は、反省の意を表さないといけないだろうね。
この映画から何を学ぶか?
正直、今まで僕は、首相は、8月15日に靖国を公式参拝すべきであり、何も、他国の反応を気にする必要はない!っと思っていた。冷酷な事に、60年以上も前の事を、謝罪しろ!っと主張する韓国、中国を、経済的または、単なるイニシアティブを握る為の外交テクニックのひとつの表現に過ぎないと。っと軽く解釈していた。この映画を見て、また、じっくり、考えてみる事で、少し考えが変わった。A級戦犯を分けて葬る等のいろいろな案もあるが、なんか、ちょっと、馬鹿馬鹿しく思えてきた。ただ、各個人が、目を閉じ、真剣に、先祖に感謝し、被害者に反省を示すだけで、実は、十分ではないかと思えてきた。それが、公式だろうが、一般参拝だろが、それは、重要ではない。だって、自分の祖父母や、両親が死んだ後の事を考えてみてよ。お彼岸の時にだけ、子供達とお墓参りに行くのと、目を閉じ、優しいお爺ちゃんだったなぁ~って回顧し、常に感謝の意を示すのとでは、どっちが、ご先祖様にとって、Happyだろうかってね。要は、パフォーマンスよりも、ハートなんだろうね、大切なのは。。。